ロシア国営原子力総合企業ロスアトム社傘下の燃料製造部門であるTVEL社は615日、シベリア化学コンビナート(SCC)で建設している窒化物燃料製造ユニット(FRU)で、主要機器の設置を開始すると発表した。作業の完了までには、1年半かかるとの見通しを明らかにしている。

FRUは、同じエリアで建設準備中の鉛冷却高速炉(LFR)パイロット実証炉「BREST-300」(電気出力30kW)専用の燃料製造施設となる。これらに同炉の使用済燃料再処理プラントを加えた3施設は、「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成することになる。

PDECは、ロスアトム社が進めている戦略的プロジェクト「ブレークスルー(PRORYV)計画」の主要施設であり、同社はこのプロジェクトにより、固有の安全性を有する高速炉で天然ウランや使用済燃料を有効利用するという「クローズド原子燃料サイクルの確立」を目指している。またPDECを通じて、開発実績の豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加えて、LFRの研究開発も並行的に進める考えである。

SCCはシベリア西部のトムスク州セベルスクに位置するTVEL社の子会社で、FRUへの機器設置は燃料棒生産ラインの除染セクションから開始する。FRU全体で40品目以上の機器を据え付ける計画で、総重量は約110トンに達するとした。SCCPRORYV計画を担当するA.グセフ副総裁は、「設計から設置に至るまで世界的にも特殊な機器を使用するため、この種の施設で典型的な手法を使うことはできない」と説明。主要な技術装置の設置については4Dモデリングを使ったデジタル方式で予め準備されており、これによって作業手順の合理化を図るとともに機器に不具合が発生するのを抑えられるとしている。

なお、TVEL社は201912月、「BREST-300」の原子炉建屋とタービン建屋、および関連のインフラ施設を2026年末までに建設するため、発電施設のエンジニアリング企業TITAN-2社と263億ルーブル(407億円)の総合建設契約を締結した。また、今年1月にはSCCの化学・冶金プラントで、LFR用のウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料の試験燃料集合体が完成。原子炉試験を実施するため、複数の高速炉が稼働するベロヤルスク原子力発電所に移送すると発表している。

(参照資料:TVEL社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA615日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)