SMR導入に向けた各国の現状
ロシア
海上浮遊式で世界で初めてSMRを実用化し、陸上でも建設予定。海外輸出も想定か
ロスアトム(ロシア)
・出力3.5万キロワットを2基載せた「浮体式」
・2020年から北極圏の沿岸で商業運転
・新型の5万キロワットを載せたタイプも建設中
中ロ、実用化で先行
輸出で主導権握る狙いも
北米や欧州より一足先に中国とロシアは小型モジュール炉(SMR)の導入を着々と進める。ロシアは「海上浮体式」のSMRを実用化し、陸上での建造も計画する。中国も2021年に陸上型の建設を始めた。
ロシア国営のロスアトムは20年5月、世界初の浮体式原発「アカデミック・ロモノソフ」の商業運転を極東チュクチ自治管区内で開始した。出力3・5万㌗の原子炉を2基積んだ船型で、地区のエネルギー需要の50%を賄うという。さらに27年以降、出力5万㌗の新型SMRを積んだ船4隻を順次稼働する予定だ。
ロスアトムは陸上での展開も視野に入れる。20年12月、ロシア極東のサハ共和国と出力5・5万㌗のSMRを北部地域に建設することで合意した。24年にも着工し28年に運転を開始する。
中国の動きも速い。国有原発大手の中国核工業集団は21年7月、海南省でSMR「玲龍一号」の実証炉を着工した。出力は12・5万㌗で、国際原子力機関(IAEA)の安全性評価を通過した。 玲龍一号は発電に加え暖房や海水淡水化にも使える設計だという。
世界の原発市場で中ロの存在感は大きい。軍事的な援助や融資を絡めアジアや中東、東欧などへの輸出を進めてきたとされる。国際エネルギー機関(IEA)の6月の報告によると、17年以降に世界で着工した31基の原発のうち、ロシア製と中国製が27基を占めた。中ロはSMR の市場でも主導権を握る可能性がある。
(川崎なつ美、三隅勇気、生川暁)