ロシア極東連邦管区内に位置するサハ共和国(ヤクーチヤ)の政府は9月5日、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が砕氷船用に開発した最新小型モジュール炉(SMR)設計モデル「RITM-200」(熱出力17.5万kW)に基づき、低出力の原子炉を同共和国内に複数建設するため、ロスアトム社と協力合意したと発表した。

極東地域のウラジオストックで第5回東方経済フォーラムが開催されていたのに合わせ、サハ共和国のA.ニコラエフ首長(=写真左)がロスアトム社のA.リハチョフ総裁との合意文書に調印したもの。これにより、両者はSMRの建設に向けた実行可能性調査や設計作業の準備を開始し、建設プロジェクトの資金調達モデルを開発、立地点の特定作業も実施するとしている。

東方経済フォーラムはロシアのV.プーチン大統領の命令により、極東地域の経済開発支援とアジア太平洋地域における国際協力拡大を目的に、2015年から毎年開かれている。極東地域の中でも北半球の寒極とされるサハ共和国は、SMRを建設することによりエネルギー供給の安定性と効率性を高めていく方針。個々の居住地、特に送電網の届かない遠隔地域に対しては、信頼性が高く良質、かつ適正価格の電力をSMRで供給できるとしている。

発表によると、ロスアトム社は砕氷船用を含むSMRの開発・利用で豊富な経験を有しており、8月には同社の傘下企業が開発した世界唯一の海上浮揚式原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ」が極東地域の最終立地点、チュクチ自治管区内ペベクに向けてムルマンスクを出航した。サハ共和国としてはロスアトム社の提案に沿って、「RITM-200」設計をベースとする低出力原子炉を地上に建設するが、SMRの発電所はモジュール式でコンパクト、工期が短い上に安全性も高い、などの特長を持つと強調している。

なお、一般紙の報道によると、ロスアトム社が開発した複数の小型炉設計の中でも「RITM-200」は主力商品と位置付けられており、ロスアトム社は今年末までに初号機の建設サイトを決定する計画。その後は6年以内に、大量製造を開始すると述べたことが伝えられている。

(参照資料:サハ共和国政府(ロシア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)