エジプトで原子力発電の導入計画を担当している原子力発電庁(NPPA)は720日、同国初の原子力発電所となるエルダバ発電所(120kWのロシア型PWRVVER-1200×4基)の建設サイトで、1号機を本格着工したと発表した。

NPPAは完成した発電所を所有・運転する。同国の原子力規制・放射線当局(ENRRA)が今年の6月末、日程を前倒ししてNPPA1号機の建設許可を発給したのを受け、同発電所の建設工事を請け負っているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が今回、同炉の原子炉建屋を設置する基礎部分に最初のコンクリートを打設した。ロスアトム社はすでに20217月、同発電所で使用する機器の製造を傘下の重機械製造企業が開始すると発表しており、1号機については2028年の営業運転開始が見込まれている。

同発電所では、第3世代+(プラス)のVVER-1200設計を採用しており、ロスアトム社によると、同型の原子炉がロシア国内ですでに4基、ベラルーシでも1基が運転中である。NPPA20193月に、エルダバ原子力発電所で建設するこれら4基分の「サイト許可」をまとめてENRRAから取得、その後20216月に12号機の建設許可を、同年12月には34号機の建設許可を申請していた。

エジプトとロシアの両国政府は201511月、同発電所の建設プロジェクトに関する二国間協力協定(IGA)を締結しており、ロシア政府が同プロジェクトに最大250億ドルの低金利融資を実施する。両国政府はまた201712月、エジプト北部・地中海沿岸のエルダバ(首都カイロの北西約300kmの地点)で4基のVVER-1200を建設する内容のパッケージ契約書に調印。この契約で、ロシア側は同発電所が稼働する60年分の原子燃料をすべて供給するほか、その他の契約に基づいて使用済燃料専用の貯蔵施設と貯蔵用キャスクもエジプト側に提供。運転員等の人材育成や設備のメンテナンスにも協力するなど、同発電所の運転開始後10年間は一連の関連サービスを提供し、エジプトを支援するとしている。

1号機のコンクリート打設にともない現地では記念式典が催され、エジプト電力・再生可能エネルギー省のM.シャーケル大臣をはじめ、ENRRAS.アタラー長官、NPPAA.エル・ワキル長官、エルダバ市が属するマトルーフ行政区のK.シュイブ知事、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁らが出席した。

シャーケル大臣は「1号機の本格着工は歴史的な出来事」とコメント。エル・ワキル長官も、「エジプトで原子力発電プロジェクトを開始するというA.F.エル・シーシ大統領の英断がなければこの日を迎えることは出来なかった」と説明した。

(参照資料:NPPA、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA720日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)