トルコで同国初の原子力発電所建設を請け負っているロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は97日、アックユ原子力発電所3号機(120kWのロシア型PWRVVER)の原子炉圧力容器を製造する重要部分の作業が始まったと発表した。

同機では今年3月に原子炉建屋部分のコンクリート打設が行われており、建設サイトでは20184月と20204月にそれぞれ着工した12号機とともに3基分の作業が同時に進行中。同発電所では第3世代+(プラス)の120kWVVER4基設置するため、4号機についても本格着工に向けて基礎ピットの建設など準備工事が進んでいる。

ロスアトム社のエンジニアリング部門、アトムエネルゴマシ社に所属するAEMテクノロジー社が今回発表したリリースによると、3号機では圧力容器の底部を複数段階に分けて製造する作業が始まった。この作業には、継ぎ目のない長さ6m、外径2.5m、重さ96トンという円筒状の鍛造品を使用。同社のボルゴドンスク工場では酸素ガス切断機を使って厚さ30cmの同鍛造品を切断したが、手持ち式の改良型カッターノズルを活用したことで、通常8時間かかる作業は4倍速の2時間に短縮された。加工済みの鍛造品はその後、620℃の高温で5時間かけて焼きなましを行うため、加熱炉に送られた。加熱後は圧力容器底部の形に型打ちするため、プレス部門で作業を行う計画である。

なお、アトムエネルゴマシ社が他の日に公表したリリースでは、1号機用に製造した炉内構造物が4月末に建設サイトに向けて出荷された。これには長さ11mの炉心バッフルや保護管などが含まれており、総重量は210トンを超えている。また、ロスアトム社の今月9日付けの発表によると、建設サイトでは2号機の格納容器の内側に、鋼製支持構造物(ICS)の第二層が設置された。ICSは鉄筋や部品類をはめ込み、鋼製ライナーを溶接した円筒状の構造物で、安全系などの機器類を防護するとともに配管貫通部を補強するなどの役割を担っている。

アックユ原子力発電所建設計画では、原子力分野で初めて「建設・所有・運転(BOO)」によるプロジェクト運営方式を採用しており、約200億ドルといわれる総工費はロシア側がすべて負担。発電所の完成後、トルコ電力卸売会社(TETAS)が発電電力を15年間にわたり購入して返済することになる。トルコ側は、建国100周年を迎える2023年に1号機の運転開始を目指しているほか、4基すべてが完成した後は、同発電所で国内電力需要の約10%を賄う方針である。

(参照資料:アトムエネルゴマシ社の発表資料①、②、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA98日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)