【ウラジオストク=石川陽平】ロシアのプーチン大統領は3日、極東ウラジオストクで、二酸化炭素(CO2)を排出しないグリーン水素とアンモニアの生産拠点を極東につくることを提案した。水素やアンモニアはクリーンエネルギーとして注目されており、生産事業に日本と中国が参画する枠組みを検討すると述べた。

極東での水素とアンモニア生産の方針については、プーチン氏がウラジオストクで開催中の東方経済フォーラムで表明した。「グリーン水素とアンモニアを生産する強力な産業クラスターをつくる可能性が極東にある」と述べ「特にアジア太平洋地域で需要が今後何十年も安定して拡大する」と強調した。

極東ではカムチャツカ、サハリン両州で水素生産の計画がすでに浮上している。ロシアは石油や天然ガスを生産する資源大国だが、2021年8月に承認した水素エネルギー発展概念では35年までに最大年1200万トンを輸出する可能性があるとした。世界で広がる「脱炭素」の流れに追いつきたい考えだ。

クリーンエネルギーは日ロ経済協力の新たな柱になるとの期待も出ている。

9月2日には梶山弘志経済産業相とロシアのシュリギノフ・エネルギー相が水素とアンモニア分野での協力を盛り込んだ共同声明に署名した。ロシアで生産し、日本が調達することを想定している。経済産業省は同日、ロシアの天然ガス会社ノバテク社とも同様の協力を進める覚書に署名した。

国営原子力会社ロスアトムも日本経済新聞の取材に、ロシアから日本への水素供給のパイロット事業で経済産業省や川崎重工業との事業化調査を進めていると説明。21年中に終えるとの見通しを明らかにした。

商船三井丸紅は3日、ロシアのESNグループなどとの間で、将来のクリーンエネルギーとしての可能性が指摘されるメタノールを燃料とする船舶の建造を検討するとの覚書を交わした。